レオロジーを活用してバッテリー電極用スラリーの挙動を最適化する方法
Morgan Ulrich | Julienne Regele | Hang Lau
September 26, 2023
軽量ノートパソコンから電気自動車の長距離運転まで、無数の用途においてリチウムイオン電池のエネルギー密度と性能を高めることが求められています。バッテリー電極はこれらのバッテリー機能に直接影響するため、技術を次のレベルに促進させようとしているバッテリー研究者は電極とその構成要素に特別な関心があります。バッテリー電極用スラリーの処理はまた、製造工程の重要なステップであるため、効率を向上させながらコストを削減させる重要な機会を与えます。
スラリーの安定性と流動性を最適化するには、カソード/アノード材料、バインダー、添加剤、溶媒を適切に調合することが必要です。材料の流動や変形を研究するレオロジーは、スラリーの研究開発や品質管理に有用な分析方法です。
レオロジーは、以下をはじめとして、バッテリー製造者が重要なスラリー品質を測定・分析するのに役立ちます。
- 混合とコーティング
- 構造の変化と回復
- 安定性と寿命
- 電極の均一性
- 品質管理
レオロジー測定の対象は?
バッテリー電極用スラリーの場合、極めて重要なレオロジー測定値は、粘度、チキソトロピー指数、および降伏応力の3つです。
粘度はスラリーの流動に対する抵抗性、つまりその内部摩擦を測定します。スラリーの調合や原材料によって、その流動挙動が大きく変動する可能性があります。スラリーの流動を理解することは、混合やコーティングの処理条件を最適化するために重要です。
チキソトロピー挙動は、材料の構造的変形における継時的変化を表します。この測定により、スラリーの静止時の構造、コーティング中の変形の様子、およびコーティング後の回復速度に関する知見が得られます。
降伏応力とは、材料が流動し始めた時に加わっている応力です。降伏応力値未満の応力では、材料は流動しません。降伏応力は、スラリーの寿命や沈降に対する安定性を予測する上で重要になります。
スラリーの調合と処理方法の最適化
スラリーのレオロジーは、研究者が電極に最適な調合を決定するために役立ちます。例えば、レオロジーは、複数の異なるスラリー調合間で安定性条件を敏感に識別することができます。バッテリー電極用スラリーの重要な特性評価方法で行った研究では、レオロジー分析を使用して、優れた均一性の混合物やバッテリー性能が特定されています。電子書籍で紹介されている実験と結果はこちらからご覧ください。
電極用スラリーのマトリックスには、バッテリーの機能と性能にとって重要な活性粉体が含まれています。粉体レオロジーは粉体材料の粘着力、降伏力、および流動性を測定します。ただし、粉体の形状、サイズ、表面処理によって、粘度低下から分散の容易性まで、スラリーの挙動が変化する可能性があります。粉体レオロジーは、最適な粉体流動とともに、粉体凝集の防止のために最適な貯蔵条件や処理に関する知見を提供します。電子書籍バッテリー電極用スラリーの重要な特性評価方法の11ページに記載された研究では、レオロジーが凝集を削減し、均一な電極コーティングを達成するために役立つことが示されています。
研究者はまた、電極用スラリーについて改善した処理条件を開発する目的でレオロジーを使用しています。オークリッジ国立研究所のHawley氏とテネシー大学のLi氏は、処理条件を最適化するためにスラリーの特性を調べる際にTA Instruments Discovery Hybrid Rheometerを使用して、スラリーの混合・コーティング温度に関する発見を発表しました。処理温度を高くすると、より短時間でより欠陥の少ないコーティングを実現できると同時に、処理による廃棄物を削減し、沈降抵抗を向上することが分かりました。
ラボにおける電極用スラリーのレオロジー
最先端の直感的なテクノロジーの利用によって、信頼性の高いスラリーのレオロジー測定値と分析を得ることが今まで以上に簡単です。TA Instruments Discovery Hybrid Rheometerは、性能、操作性、多用途のレオロジー試験に関する業界標準を確立しています。
詳細なスラリーのレオロジーに関する電子書籍には、スラリーのレオロジーを活用する方法や実際の実験例が紹介されています。この無料のリソースには、バッテリー性能を向上するためにスラリーの調合と処理条件を最適化する方法を示す研究がまとめられています。
スラリーのレオロジーを活用してバッテリー開発を推進する方法に関する具体的なご相談については、TAインスツルメントの担当者までご連絡ください。
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