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TA Instruments RS-DSC

バイオ医薬品のための次世代の熱安定性試験

TA Instruments RS-DSC(迅速スクリーニング-示差走査熱量計)は、バイオ医薬品の熱安定性試験に革命をもたらす強力で汎用性の高い装置です。TA Instruments RS-DSCは、高い効率性と、合理化された分析により、バイオ医薬品研究所が、より多くの情報に基づいた意思決定を行えるよう支援し、市場投入までの時間を短縮します。


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需要の高い生物製剤開発の世界で働く科学者にとって、熱変動下での生体分子の安定性を把握することは、製品品質を確保し、当局の承認のために不可欠です。短期熱安定性試験を実施することにより、熱応力に対する化合物の耐性を明らかにし、保存可能期間を予測し、有効性を保証することができます。これをハイスループット環境で正確に測定するための要求は、工程を中断せず、または厳格な期限に間に合わせなくては難易度が高いです。この要求を満たすために、当社はバイオ医薬品の熱安定性を迅速に評価するための新ソリューション、TA Instruments RS-DSC (迅速スクリーニング-示差走査熱量計)を設計しました。

TA Instruments RS-DSCは、次に活用できます。

  • 熱安定性試験の迅速化: TA Instruments RS-DSCは、最大24個のサンプルを同時に分析することにより、医薬品の熱安定性についての詳細な洞察を著しく迅速に提供します。またTA Instruments RS-DSCの技術により、高濃度医薬品の特性評価も簡素化することができます。
  • 効率性の向上: TA Instruments RS-DSCは、使い捨てMFC(マイクロ流路チップ)を使用してサンプルを封入することで、材料を効率的に使用します。MFCに必要なサンプル容量は15 ul 未満であり、その設計は、手間のかかるサンプル希釈や、反復的な機器洗浄の必要性と、汚染のリスクを低減することで、よりクリーンで、合理的な操作を促進します。
  • より多くの情報に基づいた意思決定を可能にする: NanoAnalyze™ソフトウェアは、TA Instruments RS-DSCが生成する膨大なデータ量を容易に処理し、分子の熱安定性と、熱力学的特性について、詳細で正確な洞察を提供します。
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RS-DSC in the lab

価値の提案

  • スループットの向上: TA Instruments RS-DSCは、24個のサンプルを同時分析することが可能なので、大幅に研究時間を短縮し、生物製剤の市場への参入を加速します。
  • 資源効率性: TA Instruments RS-DSCの最小限のサンプル所要量は、材料の最大活用や、コストの最小化が確実になることを支援します。
  • 高濃度サンプルへの対応力: TA Instruments RS-DSCは、広範囲にわたるサンプル濃度の分析で卓越性を発揮し、非常に高濃度な医薬品を効率的・効果的に分析する特有な能力を備えています。
  • ワークフローの簡素化: TA Instruments RS-DSCは、高濃度サンプルを取り扱う際に、サンプルを希釈する必要がないため、操作を効率化し、また使い捨て式のマイクロ流路チップによって、洗浄の必要性が低減または排除され、汚染のリスクを低減します。
  • 包括的なデータ分析: NanoAnalyze ソフトウェアは、データを管理し、開発を最適化するために詳細な洞察を提供します。

機能と利点

  • 平行分析: 独特なハイスループット分析により、最大24個のサンプルを同時測定することが可能となり、研究が加速化します。
  • シングルユースのマイクロ流路技術: MFCは、高濃度医薬品の特性評価を簡潔化し、洗浄時間と汚染リスクを低減することにより、操作を合理化します。
  • 最先端のデータ分析ソフトウェア: 堅牢で、使いやすいNanoAnalyzeソフトウェアは、データを自動的に一貫して分析し、詳細かつ迅速に評価します。
RS-DSC
セルの形状 使い捨て式マイクロ流路
セルの素材 ガラス
サンプル形式 MFC (マイクロ流路チップ)
使用セル容積 11 µL
サンプル容量 MFC 24個
一般的なサンプル濃度 20 mg/mL – 330+ mg/mL IgG (タンパク質による)1
サンプルスループット > 96 サンプル/日
温度範囲 20~100℃
温度スキャン速度 1 または 2℃/分
温度精度 ± 0.2℃(熱量計全体); ± 0.1℃ 再現性2
1 リゾチームを0.1 M、pH 2.5のグリシン緩衝液中、1 °C/分で使用
2 DPPC をpH 7の水中、 1 °C/分で使用 バイオ医薬品の開発のために特別に設計された、革新的な、新しいハイスループット熱安定性試験装置、TA Instruments RS-DSCにより、研究を加速化し、効率性を高め、より多くの情報に基づく意思決定ができます。
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テクノロジー

画期的な機能

TA Instruments RS-DSCは、24つのサンプルを同時に分析することで、従来の単一試料のアプローチより大幅にスケールアップし、試験環境を再定義します。従来のキャピラリーDSCよりも大幅に低減した、サンプルあたり15 μL未満の容量で機能し、一般に、示差走査蛍光定量法(DSF)よりも明確にアンフォールディングの熱力学について全体像を提供します。

 

マイクロ流体技術: 精度と利便性の未来

TA Instruments RS-DSCは、最先端のMFC(マイクロ流路チップ)を搭載し、サンプルを容易に収容できる設計となっています。この技術統合により、計測の合間に装置の測定セルを繰り返し洗浄する必要がなくなり、時間を節約し、汚染リスクを低減し、より正確で信頼性の高い測定ができるようになります。MFCは使い捨て式なので操作が容易で、迅速な移行が可能になるだけでなく、装置を危険物質から保護することができます。新型MFCの設計は、最先端の低容量シングルユース技術の例証であり、標準的な実験室器具の使用による平易なサンプルのローディングと調製を容易にします。サンプルの調製から、密封、分析の準備までを1分以内に行うことができ、最小限の容量で正確な評価を行うことができます。

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アプリケーション

TA Instruments RS-DSCは、以下のバイオ医薬品開発に幅広く適用できます。

熱安定性は、バイオ医薬品の総合的な臨床的成功を示す主要な指標であり、DSC(示差走査熱量測定)は、タンパク質の安定性に対する溶液環境の影響を特徴評価するために使用される主要なツールです。タンパク質の安定性への影響は、Tmaxの微小なズレ、またはpH、緩衝剤、イオン強度、賦形剤、界面活性剤などの変数を変化させた結果、タンパク質の安定性の10度にも及ぶ変化に反映されます。

製剤スクリーニングで得られたデータを、緩衝成分の選択過程でどのように役立てることができるかを例証するために、抗体トラスツズマブを次の4つ一般的な緩衝剤条件で評価しました:1) 一般的な作業緩衝液(PBS)、2) 細胞輸送研究用または薬物結合用の標識抗体を合成するためのリジン結合を可能にする緩衝液(ほう酸)、3) トラスツズマブ系抗体薬物複合体(コハク酸塩)、および 4) トラスツズマブの本来の製剤緩衝液(ヒスチジン)。

第一のアンフォルディング事象は、CH2ドメインのアンフォールディングに相当し、ヒスチジン、ホウ酸塩、またはPBSの緩衝液による影響をあまり受けません。その反面、コハク酸緩衝液は、CH2ドメインを不安定にし、その結果、アンフォールディングの開始とTmax, 1 が約 3℃低下します。Fab および CH3 のアンフォールディング 事象を反映する主転移に関しては、ヒスチジンおよびコハク酸の緩衝液が最も安定化する力を有しており、Tmax, 2 は 82.66℃ です。主転移は、ホウ酸緩衝液中で最も安定性が低下しており、Tmax,2 は80.69℃です。必然的に、このサンプルセットの中でトラスツズマブが最も安定する緩衝液の配合は、承認された医薬品の最終製剤に使用されるヒスチジン緩衝液となります。

RS DSC Formulation Screening

タンパク質の変異は、タンパク質の構造と機能を最適化するための一般的な戦略であり、単一のアミノ酸の変更でもタンパク質全体の安定性に測定可能な影響を与える可能性があります。DSC (示差走査熱量測定) を使用して、タンパク質の人工的変更の特性評価に役立つことは、変異がタンパク質全体に及ぼす構造的影響を理解する上で不可欠であり、バイオ医薬品開発パイプラインにおける意思決定の指導を支持することができます。配列の変更が安定性に及ぼす影響の種類を説明するため、小パネルの合成タンパク質をスクリーニングし、タンパク質配列内の単一アミノ酸変異に起因する熱安定性の変化を調査しました。

親タンパク質では、アンフォールディングは、Tmax 75.92℃で、一つの主要な熱転移内で発生します。単一アミノ酸変異を導入しましたが、短期的な熱安定性に大きな影響はありませんでした(変異1 )。一方、代替の単一アミノ酸の変異は、タンパク質の安定性に重大な影響を与えることを示しました (変異 2 および変異 3)。変異3で見られた著しい不安定性性からも明らかなように、配列の変更が常に同じ効果をもたらすわけではなく、むしろ変更の部位と新しいアミノ酸の物理化学的性質の両方に依存します。タンパク質全体の構造安定性を利用して、配列変更による所望の機能的利点を最適化することで、構造と機能の関係を把握しやすくなり、高度な治療法の開発を促進することができます。

TA RS DSC Protein Mutational Analysis

TA Instruments RS-DSCは、高濃度のバイオ医薬品サンプルを処理するために独特な設計が施されていて、抗体医薬や抗体薬物複合体に特定な重点がおかれています。抗体治療薬がますます成功を収めるようになる中で、製薬業界では皮下および眼への薬物投与を可能にする高濃度剤形への関心が高まっています。そのため、50~150 mg/mL抗体濃度を含む製剤が一般化しており、200 mg/mL以上に達することもあります。高濃度でタンパク質を配合すると、物理的に不安定化しやすくなることがあります。一方で、複数の事例研究で、濃度の増加に伴い熱安定性が向上することが示されています。したがって、着目した製剤濃度での、熱変性や、溶液環境に対する反応を把握することは、医薬品の製造物責任を軽減する上での重要な基準となります。

高濃度のタンパク質サンプルを試験する能力を例示し、目的の配合濃度で試験することの重要性を説明するために、グリシン緩衝液中の 30 ~ 330 mg/mL の鶏卵白リゾチームを評価しました。リゾチームは、低濃度 (約1 mg/mL) で簡素な単一転移サーモグラムが得られるので、DSCの参照試験サンプルとして一般的に使用されます。それより最大100倍高いタンパク質濃度を評価して、リゾチームの安定性に濃度依存性があることを観察しました。

Figure 4. Short term thermal stability of lysozyme at concentrations from 30
to 330 mg/mL in glycine buffer, data in triplicate. Inset: Average Tmax relative
to lysozyme concentration.

リソース

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