プリント基板(PCB)の熱解析
Morgan Ulrich | Gray Slough
January 22, 2024
プリント基板(PCB)は、ほぼすべての電子機器アプリケーションの中枢となる部分です。その性能と信頼性を向上させることは、小型形状と保全性の改善が機能性の向上につながるカスタムPCBプロジェクトにとって、極めて重要です。しかし、多様な条件下で長寿命と一貫した性能を確保するためには、詳細な分析が必要です。
熱分析は PCB の開発の重要なツールで、さまざまな温度での材料の挙動を把握し、材料の安定性を確保できるようになります。特にPCBに関連して、熱分析は、腐食や回路の劣化につながる恐れのある湿気の侵入を防止する上で重要なコーティングや接着剤の硬化特性の評価に、非常に有効であることが証明されています。
さらに熱分析は、さまざまなコーティングの性能を比較し、PCB 材料の硬化度を評価する定量的なアプローチを提供し、製造効率の向上をもたらします。また、異なる温度範囲におけるラミネート加工や接着剤の性能を比較しやすくなるため、加熱や圧力による製品欠陥リスクを緩和することができます。最後に、熱分析は、例えば PCB 廃棄物から生成された複合材料の研究を通じて、使用済み製品のリサイクルをサポートします1。
ここでは、PCB 評価に特化した5つの重要な熱分析技術と、製品性能と信頼性を向上するためにそれが担う中心的な役割について説明しています。
プリント回路基板(PCB)の研究で使用される 5 つの技術
開発段階早期のラミネート加工や硬化度評価から、最終製品の安全性評価を行う後期開発まで、これら5つの熱分析技術と機器を使って工程を簡素化することができます。PCB の熱分析に使用される 5 つの主要な技術を以下に示します。
熱機械分析(TMA)
熱機械分析(TMA)は、ガラス転移温度にかかわる材料挙動を観察するのに最適です。ある研究では、TA社のTMAを使ってPCB樹脂のガラス転移変化を追跡し、この変化を表面の仕上げと熱衝撃変化と関連付けました2。
別の研究では、TA InstrumentsのTMAを使用して、非導電性接着樹脂の化学的修飾に対するフィラー分散の熱特性の影響を分析しました3。このプロセスでは、材料の熱膨張特性の分析を行い、このデータをもとに熱膨張係数を算出し、ガラス転移の変化を追跡しました。この評価は、対象となる材料の特定温度範囲における適応性と、過度な膨張の結果 PCB に好ましくない応力が生じる可能性の特定に役立てられました。
熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)は、温度変化に対する経時的なサンプルの質量変化を測定します。TGA の主な活用方法の1つは、材料の熱安定性評価です。ある研究では、 TAのTGAを使用して、本質的に黒いポリイミドフィルムの熱安定性を評価しました。ポリイミドフィルムは、比類ない環境安定性で定評があり、フレキシブルなプリント回路基板に使用されています。研究チームの目的は、本質的に黒いポリイミドフィルムの製造工程が、標準的なポリイミドフィルムが本来持つ高い熱安定性に悪影響を及ぼさないかを検証することでした4。この研究は、PCBの開発に不可欠な材料の熱特性評価において、TGAが有効であることを示す典型的な例です。
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)は、硬化プロセスに加熱を使用するのか、または光照射を使用するのかにかかわらず、硬化挙動の測定に理想的な技術です。DSC は、サンプル温度を高めるために必要な熱量を測定するほか、転移潜熱、材料の転移温度、および熱容量などの特性評価に効果的な方法です。
動的機械分析(DMA)
動的機械分析(DMA)動的機械分析 (DMA) は、材料反応の変化を、加えられた力と温度の関数として分析します。応用分野として、負荷やPCBの調整に対する材料変化の観察などがあります。またこの分析手法に温度上昇を加えて、はんだ付けなどの処理に対する PCB の反応をより詳しく把握することもできます5。
フラッシュ法熱拡散分析
フラッシュ法熱拡散分析 は、熱拡散率と熱伝導率を測定するためによく使用される方法で、その優れた利便性で定評があります。この技術は、通常レーザーまたはキセノン光源によって生成される強力な光を使用して、パルスレーザーを送るのに使います。材料から検出された熱エネルギーの拡散を、通常は赤外線検出器で測定します。そしてこのデータをもとに、材料の熱伝導率を算出します。
フラッシュ法熱拡散分析により、熱輸送の正確な測定とPCBの特性評価が可能になります。ある研究グループはこの技術を使用して、高電力装置の熱管理向上のための相変化物質として用いられるニッケルチタン合金の熱特性を評価しました6。
TA Instrumentsの熱分析ソリューション
熱分析技術は、プロトタイプから最終製品まで、PCB開発のすべての工程に役立てることができます。上述されたすべての研究は、業界をリードするTA Instrumentsの熱分析装置を使用したものです。
TA Instrumentsの装置は、その比類ない信頼性、測定精度、使いやすさと操作の効率性により、業界の専門家から高い信頼をお寄せいただいています。当社の幅広い最先端の 電子装置熱分析ソリューション を活用して、貴社の製品開発を迅速化し、より品質の高い製品を貴社のお客様に提供する方法について、TA Instrumentsの電子装置専門チームにお問い合わせ下さい。
参照文献
- Tian, S., Luo, Y., Chen, J., He, H., Chen, Y., & Zhang, L. (2019). A Comprehensive Study on The Accelerated Weathering Properties of Polypropylene—Wood Composites with Non-Metallic Materials of Waste-Printed Circuit Board Powders. Materials, 12(6), 876. https://doi.org/10.3390/ma12060876
- Froš, D., Dušek, K., & Vesel, P. (2021). Investigation of Impacts on Printed Circuit Board Laminated Composites Caused by Surface Finish Application. Polymers, 13, 3203. https://doi.org/10.3390/polym13193203
- Lee, T. Y., Su, M., Yong, K., Ko, H., Ho, Y., & Sehoon, K. (2020). Epoxy/silane pre-synthesis improving thermal properties and adhesion strength of silica ‑ filled non ‑ conductive adhesive for fine-pitch thermocompression bonding. Journal of Materials Science: Materials in Electronics, 31(2), 1227–1235. https://doi.org/10.1007/s10854-019-02634-w
- Ren, X., Zhang, Y., Liu, Y., Yang, C., Dai, S., Wang, X., & Liu, J. (2022). Preparation and Properties of Intrinsically Black Polyimide Films with CIE Lab Color Parameters Close to Zero and High Thermal Stability for Potential Applications in Flexible Printed Circuit Boards. Polymers, 14, 3881. https://doi.org/10.3390/polym14183881
- TA Instruments. Characterization of printed circuit board materials by DMA. https://www.tainstruments.com/pdf/literature/TA392.pdf
- Sharar, D. J., Wilson, A., & Tsang, H. (n.d.). Intra- and inter-device passive thermal management using solid-solid Nickel Titanium phase change materials. 2022 21st IEEE Intersociety Conference on Thermal and Thermomechanical Phenomena in Electronic Systems (ITherm), 1–7. https://doi.org/10.1109/iTherm54085.2022.9899587
- Carey, T., Arbab, A., Anzi, L., Bristow, H., Hui, F., Bohm, S., Wyatt-moon, G., Flewitt, A., Wadsworth, A., Gasparini, N., Kim, J. M., Lanza, M., Mcculloch, I., Sordan, R., & Torrisi, F. (2021). Inkjet Printed Circuits with 2D Semiconductor Inks for High-Performance Electronics. Advanced Electronic Materials, 7, 2100112. https://doi.org/10.1002/aelm.202100112
その他のリソース
- ウェビナー – Improving Li-ion Battery Technology through Advanced Material Analysis
- ウェビナー – Unlock a New Dimension in your Battery Research Through Isothermal Microcalorimetry
- ウェビナー – Applications for Isothermal Heat Flow Calorimetry – Lithium Ion Battery Chemistry
- ウェビナー – Enhanced Understanding of Lithium ion Battery Chemistry Through Isothermal Calorimetry
- アプリケーションノート – Investigations into Dry Cell Battery Discharge Rates Using TAM Air
- アプリケーションノート – The Impact of Electrolyte Additives in Lithium-ion Batteries Determined Using Isothermal Microcalorimetry
- アプリケーションノート – Microcalorimetry for studying the electrolyte stability of lithium/manganese dioxide batteries