キーワード:CMC、リチウムイオンバッテリー、バインダー、水分、粉体レオロジー、粘着力、TGA
RH126-JA
要約
粉体の加工可能性は、粘着強度やフローファンクションなどの要因に依存します。粉体レオロジーを使用するとこういった特性が評価でき、ホッパー設計、流量選択、品質管理に役立ちます。カルボキシメチルセルロース粉体は、さまざまな用途で使用される吸湿材です。水分含量が粘着強度に及ぼす影響を、TA Instruments社製粉体レオロジーアクセサリーを使用して測定しています。水分含量が増加すると粘着強度も増加することがわかり、加工中の湿度管理の重要性を実証しています。
はじめに
粉末材料は、化粧品から食品まで幅広い産業で使用されており、その用途はバッテリー電極[1]や薬物錠剤までさまざまです。さまざまな製造工程には粉体が関与しており、粉体特性評価は効率的な運用を確実にし、品質管理を維持するために重要なステップです。粘着強度やフローファンクションなどの特性は、ホッパー設計、質量流、最終製品の品質に影響します。粉体レオロジーは、迅速で再現性のある粉体流特性の測定をもたらします[2]。
カルボキシメチルセルロース (CMC) は、一般に増粘剤、バインダー、または安定剤として使用されます。CMCは吸湿性であり、周囲条件でも水分を保持します。これによって流特性を変えたり、品質や製造工程に影響を与えることがあります。水分が存在すると、電極スラリーなどの最終製品におけるCMC濃度にも影響することがあります。製薬業界では、湿式造粒法や錠剤化に影響するため、CMCの感湿性を理解することが特に重要です。粉体せん断セル測定を使用して、粉体流動性に対する湿度や水分の影響が定量化されています[3]。
本研究では、TA Instruments社製粉体レオロジーせん断セルアクセサリーを使用して、CMC粉体に対する水分の影響を調査しています。このアクセサリーは、以前にラクトース粉体の流動性と粘着強度の調査に使用されています[4]。ここでは、これを使用して粘着力とフローファンクションを研究します。粉体の水分含量を決定するため、TA Instruments社製熱重量分析器 (TGA) も使用します。
実験
本研究には、Deiman社製の市販のCMCサンプルを取得しました。サンプル粉体を、周囲湿度、49%の相対湿度 (RH)、84% RHという3種類の異なる湿度室で平衡化しました。TA Instruments社製Discovery TGAを使用して、CMCサンプルの水分含量を測定しました。TGA測定は、サンプルをプラチナ製のパンに入れて窒素下でランプ速度10 °C/min、最大800 °Cで実施しました。
粉体レオロジーアクセサリーには、交換可能なせん断およびフローセルが含まれています。本研究におけるすべての測定は、Discovery HRレオメーターを使用して、周囲条件にて図1に示すせん断セルを使用して行いました。図2は、粉体サンプルを試験用に準備する手順を示しています。提供されているトリムスライドとじょうごを使用して、CMC粉体をせん断セルにロードしました。その後粉体は9 kPaの応力をかけて圧縮され、余分な粉末を除去して試験用に表面を平らにしました。
表1. 複数ステップの粉体せん断試験手順
ステップ | 事前ずり応力 (kPa) | 試験応力 (kPa) |
---|---|---|
1 | 9 | 7 |
2 | 9 | 6 |
3 | 9 | 5 |
4 | 9 | 4 |
5 | 9 | 3 |
試験は、ASTM D7891[5]に従って圧縮応力9 kPaで実施されました。表1は、使用した手順を詳述しています。各試験は、5つのステップで構成されています。各ステップの前に、サンプルは、測定されるずり応力が定常状態に到達するまで低速回転(角速度1*10-3 rad/sec)を使って9 kPaで事前せん断されます。その後、加えられている垂直応力がそのステップに対して表1に記載されている値まで減少されます。この値は7 kPa~3 kPaです。
TRIOSソフトウェアを使い、TA Instruments社製粉体せん断分析が粘着強度とフローファンクションを計算します。これらのパラメーターを使用すると、製造工程中の質量流量を予測し、管理できます。粘着力は降伏位置のy切片であり、フローファンクション (FF) は非拘束降伏強度に対する最大主応力の比です。
結果および考察
CMCサンプルの水分含量を図3に示します。
粉体せん断測定は、粘着強度と水分との間の強力な関係を示しています。CMC粉体の水分含量が増加すると、図4に示すように粘着強度も増加します。
表2にまとめられているように、フローファンクション (FF) は周囲湿度と84% RHサンプルの間で18.3から4.3に低下します。FFが高いということは、粉体が流れやすいことを意味し、これは製造工程に望まれる特性です。この結果は、効率と品質に影響する粉体流を制御するには、加工エリアでの湿度を管理することが重要であることを示します。
Table 2. Summary of powder shear measurements for CMC samples
CMC | 水分含量 (%) | 粘着強度 (kPa) | フローファンクション (FF) |
---|---|---|---|
周囲 | 8.3 | 0.15 | 18.3 |
49% RH | 15.1 | 0.58 | 9.5 |
84% RH | 25.0 | 1.20 | 4.3 |
おわりに
CMC粉体は、TGAで測定する際、水分含量が異なるように調整されています。Discovery HR上での粉体レオロジー測定を使用し、CMC粉体の水分に対する感度を判定しました。粉体せん断測定により、水分含量の増加とともに粘着強度が増加することがわかりました。その結果、水分の多いサンプルではフローファンクションが低下し、これは粉体加工に影響を及ぼします。品質管理と効率的な運用を確実にするため、CMC粉体は湿度が管理された環境で加工する必要があります。
参考文献
- K. Dennis and S. Cotts, “Powder Rheology of Graphite: Characterization of Natural and Synthetic Graphite for Battery Anode Slurries,” TA Instruments, New Castle, DE, 2022.
- R. Freeman, “Measuring the flow properties of consolidated, conditioned and aerated powders- A comparative study using a powder rheometer and a rotational shear cell,” Powder Technology, vol. 17, pp. 25-33, 2007.
- D. Schulze, “Round robin test on ring shear testers,” Advanced Powder Technology, vol. 22, pp. 197-202, 2011.
- J. R. Vail and S. Cotts, “Powder Rheology of Lactose: Impacts of powder morphology on performance of pharmaceutrical excipients,” TA Instruments, New Castle, DE, 2022.
- “ASTM D7891-15 Standard Test Method for Shear Testing of Powders Using the Freeman Technology FT4 Powder Rheometer Shear Cell,” ASTM International, 2016.
謝辞
本論文は、Jennifer Vail (PhD)、Kimberly Dennis (PhD)、Tianhong (Terri) Chen (PhD) が執筆しました。
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