ARES-G2 DETAはARES-G2レオメーターの試験機能を拡張するアクセサリで、容量や伝導率の特性評価を行うことで物質の応答を測定します。誘電分析では振動電場 (交流場) がサンプルに印加されますが、印加された電荷の一部はサンプルに蓄積され (容量)、残りの電荷はサンプルを通じて放散します (伝導率)。このような電荷の蓄積および放散能力は、材料の応力緩和特性やサンプル内のイオン移動度に大きく依存しています。誘電分析は相分離システムの安定性分析、および、エポキシやウレタンシステムなどの材料に関する硬化速度のモニタリングにおいて、PVC、PVDF、PMMA、PVAなどの極性材料を特性評価するための強力な技術です。従来型の動的機械分析で一般的な100 Hzの制限を超える幅広い周波数を利用できるため、誘電分析は相補的な材料特性評価技術としてよく用いられます。
特長とメリット:
- セラミックで絶縁された特殊設計のプレート
- 標準プレートと硬化システムに用いる使い捨てプレートを選択可能
- 温度と軸力を制御した誘電測定を単独で実施可能
- レオロジーと誘電率を同時に測定
- TRIOS Softwareで完全にプログラム可能
- 時間/温度スーパーポジション
- マスター曲線の生成
- 幅広い誘電周波数範囲:20 Hzから30 MHzに対応
- 取り付けと取り外しが容易
- 温度範囲-150℃ ~ 350℃でFCOに適合
技術:
ARES-G2の誘電アクセサリは、特殊な絶縁処理が施され、レオメータに直接取り付け可能な上部ジオメトリと下部ジオメトリのセットから構成されます。標準の25 mm並行プレートのほか、8 mmまたは40 mmの使い捨てプレートを選択可能です。アクセサリは容易に取り付け可能で、外部の誘電LCRメーターとの接続に必要なすべてのワイヤーとハードウェアが含まれています。このシステムは評判の良い2つのKeysightのLCRメーターであるE4980A (20 ~ 2 MHz、0.005 ~ 20 V) および4285A (75 kHz ~ 30 MHz、0.005 ~ 10 V) に対応します。温度制御は-150℃ ~ 350℃の範囲内でフォースコンベクションオーブンによって実施します。最大20 Nの優れた軸力制御、ギャップ温度補償機能、および強力なTRIOSソフトウェアとの完全統合機能を組み合わせることで、本誘電アクセサリは単独誘電測定モードや同時誘電測定、機械測定のいずれの場合でも使用することができます。
多周波数の誘電昇温
多周波数の誘電昇温
図は1 kHz ~ 1 MHzの4種類の誘電周波数におけるポリマー(メタクリル酸メチル)、PMMA、サンプルの昇温を示しています。遷移温度以下の低温状態では、貯蔵誘電率 (ε’) の振幅は誘電周波数が増加するにつれて減少します。同様の反応は、貯蔵誘電率 (ε’) に対する損失誘電率 (ε”) の比率を表す誘電正接 (δ) の信号でも観測することができます。温度が上昇するにつれて、誘電正接 (δ) の遷移ピークは周波数の増加と共に高温度へ推移します。この結果はポリマー鎖の移動度の増加と共に双極子緩和時間がより短い時間スケールへシフトすることを示唆しており、誘電試験から有力な情報を得られることを証明しています。
化粧用クリームの相分離
化粧用クリームの相分離
レオロジー試験と誘電試験の組み合わせは、食品や化粧品などの温度安定性を評価に適用できます。この図は25℃から-30℃まで冷却した2つの水性化粧用クリームから収集したデータを示しています。貯蔵弾性率 (G’) を評価したレオロジーデータでは、POND’S® クリームが-18℃で急激な弾性率の増加を示すのに対し、NIVEA®クリームは温度範囲全体でより連続的な変化を示しています。POND’Sクリームのレオロジーデータが急激に増加したことは、不安定性を示すものであると解釈されるかもしれません。しかしながら、誘電データを同時に収集することにより、このような材料の挙動をより詳しく理解することができます。
また、この例では主に水相によって決まるイオン移動度の変化を定量化する損失誘電率 (ε”) も示しています。冷却時にはNIVEAクリームのε”は2桁増加しますが、POND’Sクリームではほとんど変化しません。ε”の急激な増加は水相が分離するにつれて材料のイオン移動度が増加したためです。
この追加情報から、NIVEAのサンプルは相分離を起こし、POND’Sのサンプルは相分離を起こさないことがわかります。冷却プロセス中に相分離が発生する場合、水相のサイズは増加し、サンプルの形態を徐々に変化させます。これにより、G’の信号も徐々に増加します。対照的に、POND’SクリームのG’の大きな変化は、形態がより安定かつ均一であるために遷移が発生した結果生じたものです。