2019年のノーベル化学賞受賞から今日まで:リチウムイオン二次電池の次の展開は?
Morgan Ulrich | Chris Stumpf
January 23, 2022
リチウムイオン二次電池は完成までに数十年かかっていて、その潜在性を完全に認識するのは数十年後です。今日リチウムイオン二次電池は、世界中の携帯電話、ノートパソコン、医療機器、電子機器に電力を供給しています。また、リチウムイオン二次電池は、再生可能エネルギーも支援しています。風力や太陽光などの断続的なエネルギー源のエネルギーを保存できるためです。開発全体を通じて、リチウムイオン二次電池は、バッテリーの性能を最大化しつつ、有害な反応が生じるリスクを軽減するという課題を科学者に突きつけてきました。今日のバッテリー科学者は、以前の発見に基づいてソリューションを構築しつつ、主要な用途領域で進展を促進するバッテリー機能を改善する必要があります。
リチウムイオン二次電池の簡単な歴史
リチウムイオン二次電池の重要性により、2019年のノーベル化学賞は、リチウムイオン二次電池を開発したJohn B. Goodenough、M. Stanley Whittingham、吉野彰氏に授与されました。これらの科学者のそれぞれは、今日我々が知っている形で利用されるようになるまでリチウムイオン二次電池を進展させた発見に貢献しました。これらの科学者は、失われがちで、正電荷を帯びたイオンになりがちな特徴のペアリングされていない電子のあるリチウムの元素(原子番号3)をとっかかりにしました。このような電子が失われがちである特徴は、バッテリーの用途に対して大きな潜在性を提供し、アノードからカソードへバッテリーセルを通じて電流を供給することを可能にしています。リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度も、携帯電話やノートパソコンなどの持ち運び可能な小型のデバイスに最適です。最後に、リチウムイオンは、充電中にアノードに簡単に戻り、再充電を可能にします。これらの受賞者は、リチウムイオンの利点を見事に利用して、材料の揮発性をコントロールしつつそのパワーを駆使するソリューションを開発しています。
Wittingamはまず最先端のリチウムイオン二次電池のプロトタイプの作成を1970年代の半ばに完了し、この際にカソードとしての二硫化チタンを発見しています。Wittinghamのバッテリーは、2ボルトという印象的な数値を実現しましたが、このバッテリーは自然に発火されてしまう傾向がありました。1980年代に、Goodenoughが二硫化チタンをコバルト酸リチウムで置換し、バッテリーの機能を2倍の4ボルトに向上しましたが、可燃性の問題は解決されませんでした。1980年代の後半に、吉野氏がリチウム金属アノードを石油コークスで置換しました。これは、高電圧を維持できるだけでなく、バッテリーの安全性を大幅に向上しました。
これらの発見により誕生したリチウムイオン二次電池は、軽量で再充電可能で、非常にパワフルなものです。このバッテリーにより、携帯電子機器、電気自動車、電動自転車の世界が実現されたのです。もちろん、ノーベル委員会のメンバーが語っているように、科学の進展は完了するものではありません。研究者はリチウムイオン二次電池の技術を引き続き改善し続けるでしょう。そして、再充電できる再生可能なエネルギーに向けてのシフトに対して、他のバッテリーがリチウムイオンのバッテリーにすぐに加わることでしょう。
リチウムイオン二次電池の新しい需要
今日のバッテリー開発者はまだ、上述のリチウムイオン二次電池の3名の発明者のように、安全性とパワーをバランスよく両立させるという課題を抱えています。しかし、バッテリーの使用方法の結果、他の要素もフォーカスされるようになっています。
家電のメーカーは、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度、あるいは軽量で保存できるエネルギーの量に最も関心があります。携帯電話やノートパソコンのメーカーは、より多くの充電量を確保できるバッテリーにアップグレードし、軽量で持ち運ぶことが可能な製品を開発することを常に模索しています。また、これらのメーカーは、消費者が一回の充電で長くデバイスを利用できるように、バッテリーのランタイムにフォーカスを当てています。
電気自動車はランタイムを何よりも高く評価します。電気自動車がガソリン車が給油を必要するよりも高い頻度で充電を必要とする場合、消費者にとって魅力的な投資にはならないからです。さらに、電気で動くバス、貨物トラック、飛行機には、さらに長いランタイムが必要です。また、電気による運送には、堅牢なライフサイクルも必要です。リチウムイオン二次電池が、機能が劣化し使えなくなるまでに、何千回も再充電可能であるようにする必要があるのです。
リチウムイオン二次電池は、地球に優しいエネルギーの保存を支援するためにますます使用されるようになっています。この機能を確保するために、リチウムイオン二次電池は、インパクトを最大限引き出すために、高いサイクルライフを確保する必要があります。これらのバッテリーは、エネルギーの生成を行う場所の近くに配置されるため、持ち運び可能である必要はありません。また、風力や太陽光により頻繁に再充電されるため、長いランタイムを必要としません。
すべての用途の領域で、リチウムイオン二次電池は安全を確保する必要があります。風力原動機からのエネルギーを保存している倉庫に配置されていようと、電気自動車に電力を供給している倉庫に配置されていようと、高い可燃性で環境やユーザーを危険にさらすことはできません。
革新的なリチウムイオン二次電池の設計を最適化
リチウムイオン二次電池の科学者には、数多くの満たす必要のある需要が突きつけられていて、過去に成功したことを繰り返すだけではこれらを克服することはできません。新しいバッテリーは、以前の機能を上回るだけでなく、性能や安全性を向上する必要があります。
リチウムイオン二次電池の安全に関する最大の脅威は熱です。環境温度が高くなった場合、あるいは電気化学による内部反応が生じた場合のいずれであろうと、バッテリーのコンポーネントを加熱し過ぎると、熱暴走反応が生じて、壊滅的なエラーや燃焼が生じることがあります。したがって、バッテリーの研究者は熱分析を利用して、幅広い温度範囲でバッテリーの性能を測定しています。熱分析のデータにより、情報を利用した材料の選択、設計、添加物の変更を行い、最も安全な構成を行うことができます。
リチウムイオン二次電池の他の人気ある材料分析用機器には、レオメーターやマイクロカロリーメーターが含まれます。レオロジーとは、材料の流れと変形に関する研究分野です。レオメーターを利用すると、科学者はスラリーや電極コーティングを最適な粘度で作成し、保管、混合、コーティング、乾燥を最適化できます。マイクロカロリメトリーは、電気化学や物理化学のプロセスの際に放出される最小の熱を測定します。マイクロカロリーメーターを利用すると、バッテリーの開発者は、熱の管理、構造の進化、寄生反応の熱の分離を最適化できます。
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他のリソース
- Webinar – Improving Li-ion Battery Technology through Advanced Material Analysis
- Webinar – Unlock a New Dimension in your Battery Research Through Isothermal Microcalorimetry
- Webinar – Applications for Isothermal Heat Flow Calorimetry – Lithium Ion Battery Chemistry
- Webinar – Enhanced Understanding of Lithium ion Battery Chemistry Through Isothermal Calorimetry
- Application Note – Investigations into Dry Cell Battery Discharge Rates Using TAM Air
- Application Note – The Impact of Electrolyte Additives in Lithium-ion Batteries Determined Using Isothermal Microcalorimetry
- Application Note – Microcalorimetry for studying the electrolyte stability of lithium/manganese dioxide batteries