高分子溶融体レオロジーワークフローの自動化:Discovery Hybrid Rheometer用自動トリミングアクセサリー

キーワード:ワークフローの自動化、高分子溶融体、自動トリミング、Discovery Hybrid Rheometer、リサイクル可能なポリマー、LDPE

RH127-JA

要約

Discovery Hybrid Rheometers用の自動トリミングアクセサリーは、高分子溶融体レオロジー試験において溶融、ギャップの設定、そして重要なサンプルトリミングステップを自動化します。このステップを自動化することで、データの一貫性が5倍も向上し、連続離席時間を80%増加させ、新操作者のトレーニング時間を30分未満に短縮します。このセットアップでは、操作者が試料を乗せ、オーブンを閉じ、「スタート」を押すだけで、高品質の高分子溶融体レオロジーデータが生成されます。

はじめに

高分子溶融体レオロジーは、処理、押出加工、形成部品に影響を及ぼす分子構造のフィンガープリントを得るためにを使用することができます。処理の過程では、ポリマーを等温条件で長時間保持したり、金型への流動性を向上させるために温度を上げたりすることがあります。安定性の評価、処理条件の決定、および品質管理の維持には、特に使用済みリサイクル (PCR) 材料などばらつきのある原料の場合、溶融体のパラメータを定量化することが重要になります。これらのパラメーターは、TAインスツルメントのDiscovery Hybrid Rheometer (DHR) で、 Environment Test Chamber (ETC) オーブンの併用により実行される振動測定で定量化できます。自動トリミングアクセサリーの追加により、高分子溶融体レオロジーのワークフローが改善します。

高分子溶融体レオロジー共通のジオメトリは、並行プレートです。このジオメトリでは、流体に誘発される速度勾配が外側のエッジで最大になり、測定装置により測定されるトルクはこのエッジを代表するものとなります。正確で再現性のある結果を得るには、サンプルを適切に充填・トリミングして、エッジ効果を防ぐことが重要です。ギャップの充填が不十分な場合、予想よりも低い値となり、ギャップの充填が過剰な場合は、余分な抗力により予想よりも高い値となります。どちらのシナリオでも不正確な結果が生成され、充填の不十分や過剰によるばらつきはデータの矛盾をもたらします。

平行プレートのジオメトリでは、追加のサンプルを乗せ、トリムギャップ(通常はジオメトリギャップより5%上方)まで下げ、サンプルが平行プレートと同一平面になるように平らな面でトリミングすることで、正確な充填が達成されます。次いでジオメトリがジオメトリギャップまで下げられ、そこでサンプルがわずかに膨らめば、充填が正確であることを示します。高分子のペレット、フレーク、または粉末を使用している場合、このステップは従来、取り外し可能なメルトリングを使用して行われます。このステップでは、トレーニングを受けたユーザーが装置の前にとどまり、サンプルをメルトリングに投入し、サンプルが溶融するまで待ち、ジオメトリを下げてサンプルと接触させ、メルトリングを取り外し、ジオメトリをトリムギャップに送り込み、サンプルをトリミングし、最後にジオメトリをジオメトリギャップに送り込む必要があります。また、この処理にはETCオーブンの開閉も含まれ、これにより、サンプルの温度平衡に影響を与えたり、不活性環境が使用されている場合には酸素が侵入したりする可能性があります。

さらに、ユーザー間のサンプルの充填やトリミングのばらつきも、データのばらつきを引き起こす可能性があります。トリミングに慣れていないユーザーの場合、データがばらつくか、また有効かは、正確で一貫したトリミングができるかどうかにかかっています。複数人の操作者の場合は、トリミングの標準操作手順に厳密に従い、同一のトリミングツールを使用する必要があります。オーブン滞留時間、トリミング時間、オーブンが開いている時間などのタイミングも、操作者間で一貫している必要があります。自動トリミングアクセサリーは、ユーザーによる誤りやマルチユーザーによる不一致に関連するさまざまなばらつきの原因を取り除きます。TAインスツルメントの自動トリミングアクセサリーを使用して、測定の一貫性、繰り返し性、および精度を向上させることができます。

自動トリミングアクセサリー

図 1 に示す自動トリミングアクセサリーは、ステージ、使い捨てトリマー、ロッキングリング、および空気圧制御系(図示せず)で構成されています。特に新ユーザーのトレーニングは簡単で、30 分以内で完了します。ユーザーは、ジオメトリとアクセサリーを目的の温度に平衡化し、ギャップをゼロにします。次いでユーザーは使い捨てトリマーを取り付け、ロッキングリングで固定します。ユーザーはサンプルを載せ、オーブンを閉じ、TRIOSでの手順を開始します。一旦手順が開始されると、測定装置、アクセサリー、およびソフトウェアが残りのステップを実行している間、ユーザーは席を離れることができます。図 1 の枠1、2、および 3 に示すように、測定装置はジオメトリをトリムギャップまで下げ、ユーザーが指定した時間待機した後、トリマーアセンブリを自動的に下げてサンプルをトリミングします。自動トリミングアクセサリーは、高分子溶融体レオロジーのワークフローを半自動化し、データの一貫性を向上させ、離席時間を増やし、操作者のトレーニングを軽減します。

Figure 1. Automated sample trimming with the auto-trim accessory.
Figure 1. Automated sample trimming with the auto-trim accessory.

データの一貫性

低密度ポリエチレン (LDPE) は、リサイクル可能な一般的な梱包材です。未使用LDPEの溶融特性を定量化することは、未使用のものとリサイクルされたものを処理し混合するために重要です。図 2 に示すデータは、自動トリミングアクセサリーを使用して収集されたもので、180℃で未使用のLDPEを対象としています。初心者から経験豊富なレオロジストまで、3 人の操作者に分かれて、合計 36件の試験が実行されました。交差弾性率を試験番号に対してトレースし、試験番号と操作者の間で各値は ±8%以内に収まります。自動トリミングを実行したすべての試験における分散係数(COV=標準偏差/平均)は 2.3%であり、これは、1 人の専門レオロジストが手動トリミングを行った場合のCOV 2.6%に匹敵します。

Figure 2. Crossover modulus for LDPE at 180 °C. Each data point was collected with the auto-trim accessory.
Figure 2. Crossover modulus for LDPE at 180 °C. Each data point was collected with the auto-trim accessory.

離席時間

180℃でのLDPEについて、自動トリミング実験と手動トリミング実験の合計実験時間を図 3 に示します。合計時間はユーザー時間と離席時間に分かれます。自動トリミング方法のユーザー時間は約 1 分であり、手動方法の時間のわずか 22%です。合計試験時間はほぼ同じですが、ユーザーの離席時間は約 80%増加します。このユーザー時間の削減により、8 時間の勤務時間ごとに利用可能な操作者時間が 1 時間以上増えることになります。こういった離席時間により、ユーザーは追加のサンプルを準備したり、他の測定装置をチェックしたり、自動トリミングアクセサリーを使用して 2台目のレオメーターを作動したりすることができます。アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS) など、長い緩和時間を持つサンプルを試験する場合、この離席時間はさらに増加します。自動トリミングアクセサリーは、手動の方法と比較して同様の合計実験時間を維持しながらも、ユーザーに自由時間を与えます。

Figure 3. Total experiment time divided into user and walkaway time. The auto-trim accessory shows a reduction in user time and an increase in walkaway time.
Figure 3. Total experiment time divided into user and walkaway time. The auto-trim accessory shows a reduction in user time and an increase in walkaway time.

おわりに

TAインスツルメントの自動トリミングアクセサリーは、高分子溶融体レオロジーのワークフローにおける重要なステップを自動化し、データの一貫性を向上させ、ユーザーの離席時間を増加させます。このアクセサリーは、個々のユーザーによる一貫性、マルチユーザーによる一貫性、サンプルが体験する温度プロファイルなど、データのばらつきの原因を大幅に減らします。ユーザーそれぞれに与えられた自由時間を使って、操作者が1人で複数の測定装置を管理したり、ラボで他の重要なタスクを実行したりできます。これらのデータの一貫性と操作者の効率の向上はすべて、最小限の必要操作者トレーニングで実現できます。

謝辞

本記事はTAインスツルメントのKimberly Dennis博士によるものです。

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